✨幼なじみ✨(桜月 雪)

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「い、いや、別に、そういうわけじゃないけど…」 雪にせめられ少年は困ったような顔をしている。 雪の家は、彼女のひいお婆さんの代からこの青森で酒屋を営んでいる。桜月酒店といえば地元ではそこそこに有名だ。桜月家は代々女系家族で、雪の母親も市内の高校で教鞭(きょうべん)をふるう父親を入り婿にしていた。 また雪の家は、昔風の作りで部屋数が多い。その為、部屋を遊ばせておくのももったいないと、雪の母親の提案で二階の一部の間貸しを始め、少年達の一家が東京からやって来て、その部屋におさまったのが、今から四年前の春。 それからは、一つ屋根の下ということもあり、雪の母親の面倒見のいい性格もあって、彼女と同い年の少年と、弟の純の三人はまるで兄妹のように一緒にすごし成長してきた。もちろん、小学校に入学した時から、二人は一緒に登校していたのだが、この頃、どうも、少年が、雪と一緒に登校するのを嫌がっているようなのだ。 「みんなにからかわれるのが嫌なの?」 「う、うん…まあね…」 実は最近、二人にあるあだ名が付けられた。それは(桜月夫婦)。小学校中学校という、異性への目覚めがはじまる微妙な時期、子供達はどうしていいかわからないその気持ちを、まず他人をからかうことから始める。二人は今、そのかっこうの標的だった。
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