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朝日が昇る。
鬱蒼とした森が開け、日の出のよく見える崖際に建てられたのは三つの墓だ。硬い地面に胡座をかいた翼は無の表情で墓を眺め、その数歩後ろで虎雄が佇む。腹の底に鉛が沈んだような消失感。だというのに呆れるほど晴れた空が眩しい。
一瞬にして過ぎ去った数日間はあっという間で、それが現実だったのかと疑いたくなるほどだった。あらゆるものを失ってまだ丸一日と経っていないのに、全てが遠い昔のことのように感じる一時。もう随分の間黙ったままだった二人。
特に何を意識するでもなく、日向の言葉が何度も思い返された。もはや振り払おうと足掻くこともなく、胸の奥底まで侵食して染み付いていく。何を言われても反論することの出来なかった幼い二人は、自身の無力さをただ思い知らされた。
「……虎」
不意に、翼が掠れた声を振り絞る。視線だけを翼の背中へ向ける虎雄。翼は振り向くこともせずに続けた。
「行こう、虎。早く……王都へ」
その言葉が何を意味し、翼が何に手を伸ばそうとしているのか。察した虎雄は眉をひそめた後に笑顔を浮かべた。勝ち誇ったようないつも通りの笑顔。それを精一杯目指した、悲しげな笑み。
「ったりめーだ。俺が王都までの最速ルート見つけてやるよ、ユッキー」
そこで初めて翼が深呼吸をする。立ち上がり、腰に携えた刀の柄を握って微笑んだ。その瞳に光が宿っていないことには見て見ぬ振りをし、虎雄が墓を一瞥する。
覆いきれない傷口を隠し、血だらけのまま歩き出す二人。目的の場所は変わりなく、目指す理由だけが姿を変える。
──────禊萩町。FIN。
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