面倒臭いだけのひと。

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二人が振り向いたそこに居たのは、まったくもって感情の無い無機質な表情を貼り付けたクルドであった。 「……一体何を言い争っていたの」 今までずっと戦場に出ており、若干浮世離れしている所為もあるか、どうやら二人の会話の意味が理解出来なかったらしい。 「いや、別になんでも無いんだよ」 苦笑しながらそう言うファイ。 本当、別に知るような事でもないのだ。 誰が得をする訳でも無いものであるのだから。 「そう、なら良いわ。にしても、仲がいいのね」 「……扉を見て来たんだよな。これで仲が良い風に見えますか。というか、そもそもどうやって中に入ってきたんだよ」 「……普通に」 「普通にって……あのな。扉は完全に壁となっていた筈だぞ」 「だから普通に壊して」 勢いよく立ち上がって入口を見る。 だが、そこにはちゃんと扉と言う名の壁が存在していた。 「しっかりと直しておいたわ」 「……うん、有難う。だけど扉を直しておいてくれた方がもっと嬉しかったかな」 「私の専門は火属性。地属性は貴方達に毛が生えた程度しか使えない」 「ああ、うん。そうなんだ」 どことなく脱力した風に、ファイはそう言う。 確かに、直しておいてくれた方が、どれだけ有難かった事だろうか。
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