面倒臭いだけのひと。

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出来る事なら頼みたくないのだ。 どうせ、あの人に頼んでも……。 「面倒臭いからやだよ」 「絶対こう言われるに決まっているんだから……って!」 「退屈しのぎに来てやったぜ」 親指を付きたて、白い歯を光らせ、非の打ちどころのない、まったくもって幸せそうな笑顔をしたリオンがいつの間にかそこに居た。 驚いて首を向けたまま無言になるファイ。 他の面々も同様だ。 「おいおい、なんでそんな驚いているんだよ」 不服そうに唇を尖らせて、リオンはそう言う。 誰だって気配が無いのは怖いのだが。 それに、クルドの時と違って言い争いをしていたわけでもない。 「リオン様、せめて扉をノックして入るとか、そんな事が出来ないんですか」 溜息を吐いて、ファイは咎めるが彼には全く意味のない事であると、分かっている。 「それ以前に扉なんて無かっただろうに」 「扉が無かったって……というか壁をどうやってくぐってきたんですか」 「無論、何時も通り」 「いや、何時も通りって……普段は魔法で結界を壊してから、解錠して入ってくるじゃ無いですか」 「だからそれと同じ風に」 「ああ、もう良いです。分かりました。ようするにクルドと同じ方法でしょう」 「いやぁ、もの分かりが早いと助かるねぇ」 「誰がこんな風にしたんですか」 悪態をつくも、リオンにとっては馬の耳に念仏も良い所。 所詮彼にはファイの苦悩なんてわかる筈も無いのであった。 「それで、クルドは一体何の用なんだ」 「別に、何か大騒ぎが聞こえて来たから」 「野次馬ですか……」 「……そうね。確かに野次馬ね」 「自覚なしか。まぁ、うん。よくよく考えたらこれは大騒ぎになっていてもおかしくは無い事だもんな」 全くもってその通りである。 普通、ここまでの騒ぎになっているのだったら、もっと大きな騒ぎになっていてもおかしくは無い。 どうやら、ファイには色々とレッテルが張られるようになったらしい。 ホモの他にも色々と。 道理で以前と比べてラブレターの数が減った訳だ。 以前は日に一度はラブレターをもらっていた彼であるが、ここ最近、特に一学期後半からラブレターをもらう事が少なくなって来たのだ。
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