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理由としては、二つある。
一つは、ファイが思っていたよりも俗物的で普通の少年だったことだ。
そしてもう一つ。
それはファイやカレナが知る所では無いのだが、ファイがカレナに好意を寄せている事が分かったからである。
当然のごとく、本命の相手がいるのであれば、よりつかなくなる。
尤も、付き合っていないのを知っているので、駄目もとでラブレターを渡してくる人は未だいるが。
「……そうか。これが当たり前だと思っていた節があるな、最近」
「慣れただけよ。当たり前の事じゃ無い」
クルドは表情を変えずに、そう言った。
「いや、慣れって怖いな」
そんな彼女に対して、ファイは苦笑しながら言う。
無表情で言われると、なんだかこそばゆい。
「そうね。「慣れ」は怖いわね。誰かを殺す事に、一切躊躇いを感じなくなる」
クルドは何気なく、普段となんら変わりない普通の口調、声色でそう言った。
そう、普段となんら変わらないが故に、染みわたる言葉。
特にリオンには彼だからこそ染みいる言葉だっただろう。
彼だからこそ。
「確かにな。俺も、似たようなもんだったし、お前たちも同じようになるさ」
リオンは苦笑しながらそう言った。
お前達、とは広域的にファイ達の事をさしているのだろう。
カレナは何度か人を殺した事がある。
それにピアナだって、人を殺した経験がない訳がないだろう。
「おや、私も人を殺しているのだけれど」
カレナは唇を尖らせて、何故か不服そうにそう言った。
「そいつは、悪かったな。でも、出来る事なら人は殺さないでいた方がいいんだよ」
親心からの言葉だ。
リオンは出来る事なら、彼らの人殺しの英雄になってほしくない。
自分と同じ、紅い天使に。
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