面倒臭いだけのひと。

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確かに原因はカレナにあるが、安易に貸したリオンも悪い。 「これで、分かっただろ。俺が使っているリミッターは特別製だって事が」 「……否が応でもわかったわよ」 リミッターをつけた腕をさすりながら、カレナはそう言った。 ギルドSクラスの魔力量を、肌で味わったのだ。 少しばかり呆けもする。 目指す場所の高さに目もくらむ。 「なら良いんだが、そうやすやすと人にやりたい代物でもないのでね」 鼻歌を歌いながら、目の前にある料理を見てそう言うリオン。 もう意識は目の前にある、夕飯に向いているらしい。 その様子を観察していたクルドは自分の手元に目を落とした。 そこには自分の分がきちんと置かれている。 「さて、それではいただきます」 そう言うと、みんなは一斉に食事を始めた。 クルドはそれに戸惑いながらも、おずおずと箸を握る。 普段一人で食事を取る事が多いため、このような雰囲気に慣れていないのだ。 まぁ、それもいずれはなれていく事だろう。 彼女が平凡な暮らし方と笑顔を取り戻すのは、近い未来に来る事だろう。 どうせ、ここにクルドをここに送り付けて来た連中はそれが目的なのだろうから。 だけどそれをリオンは手伝う気など毛頭ない。 だって、面倒くさいのだから。
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