7442人が本棚に入れています
本棚に追加
そろそろ夏も終わりである。
いや、暦の上ではすでに夏は終わっているのだが、流石に残暑は厳しかったのだ。
未だ夏であると錯覚させるに相応しい程の灼熱を、あの憎らしい太陽は放っていたのだ。
だがしかし、ここ連日の夕立の所為か、以前ほどの暑さは無く、そろそろ肌寒くなるような気もして来ている。
当然、昼は未だ汗ばむ程に暑いが。
さて、時刻は朝。
爽やかな女子生徒達の挨拶が行き交う校門前では、美しい新緑の木々が涼しげな風に葉を揺らしている。
しかし、見渡す限り女子生徒ばかりだ。
男子生徒も少数ながらいるものの、その誰もが制服とは思えない服装で登校している。
執事服と言ったらいいのだろうか、燕尾服のようなそれを身に纏い、特定の女子の隣を静かに歩いていた。
それはある種異様な光景ではあるが、彼女たちには最早見慣れた光景である。
そんな何処か浮世離れした光景が見られる学校、それがここ聖オラトリオ女学院である。
一時期カレナが通っていた学校ではあるが、その歴史は非常に古い。その割に、校舎は綺麗だが。
歴史はファイ達の通っている王立ユーレリウル学園に匹敵する。
この学校では立派な淑女を育てる為のカリキュラムがある。
当然、通っているのは貴族のお嬢様など、名家の娘ばかり。
中には歳の近い従者などを連れて通っている生徒もいる為、そういった従者の為の授業も用意されている。
流石に授業まで同じものを受けさせるわけには、行かないらしい。
受ける内容にも多少の差があるようだ。
そんな中を一人の女子生徒と一人の男子生徒が登校していた。
いや、男子生徒の方はその女子生徒を追いかけている、と言った方が正しいだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!