少女たちの楽園へ……

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その女子生徒は聖オラトリオ女学院指定の制服に身を包み、あろうことか箒に腰かけて登校していたのだ。 その速度は、速いすぎる、という訳でもないが、やはり歩くよりも早く、少年が小走りにならなければならないほどである。 箒に腰かけたなんとも古風な魔女の容姿は、そう一言だけ。 美しい。 その一言に限るだろう。 端正な顔立ち、胸はふくよかで腰は引き締まっており、肌はミルクのように白くきめ細やかだ。 優雅に空を飛ぶ彼女からは、そこはかとない気品を感じさせられる。 健全な男子生徒諸君は当然のこと、周囲の女子生徒達は、同性でありながらも彼女の姿に見惚れてしまっていた。 それほどまでに彼女の姿は美しく、魅力的であったのだ。 嫉妬する事すら忘れるほどに。 とはいっても、そのすぐ後ろで走っている少年は、そんな事を一切考えたことがないだろう。 彼の脳裏にあるのは、疲れたの一言だけ。 先程からずっと走って来ていたのだ。疲れない訳もない。 とはいっても男子、息切れを一切していないのは、評価に値するべき点であろう。 前を通り過ぎたのが絶世の美女であったが為に、印象が薄いであろうが彼もそこそこに整った顔立ちをしている。 「少しは速度を落として下さいよ、エル様」 少年は前を飛行する魔女学生に向かって、そう声をかける。 「何を言っていますの。この程度で情けない」 後ろを振り向く事無く彼女は少年に言った。 「そんな事を言われてもですねそろそろ、疲れと言うのが……」 「まったく、情けないですわね、ファイ。このくらいで音を上げるなんて」 ほんの少しだけ速度を落とすエル。
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