7442人が本棚に入れています
本棚に追加
その女性教師は二人の前までやってくると、話を始めた。
「貴方達が話に出ていた転校生ね。初めまして、私はレグルスさんのクラス担任のアシュレイ・ヴァン・ホーテンです」
流石はお嬢様学校。
どうやら、学生だけでなく教師も貴族ばかりのようだ。
目の前に居るこの女性は、美人というほどでもないが、やはり気品というものを持ち合わせているらしい。
言葉の端々から、誇りと言った風なものが滲みだしていた。
「私の担任、という事はファイは別のクラスですのね」
横目で従者の事を見ながら、当り前のことを確認する。
目的はそちらにもあるのだから。
「ええそうよ? 不安かしら?」
「そのとおりですわ。ドジで外の事を何も知らないこの子がきちんと上手くやっていけるのか……」
「エル様。その言葉、貴方にそっくりそのまま返させて貰います」
エルの言葉に対して、ファイはきちんと冷静に返答をする。
普通ならこんな主従はいないのだが、どうやら別の意味で勘違いをしたのだろう。
アシュレイは微笑みながらエルに言う。
「離れ離れになるのはさみしいでしょうけど、これも淑女になる為の試練だと思って下さいね。では、案内しますわ。デルシオン君は……」
そこでふと、彼女の言葉が止まった。
「どうしたんですか?」
突如として、言葉を止めたアシュレイを怪訝そうな瞳で尋ねる。
「クロノ・デルシオンというと、もしかしてあの暴風の……」
「え? ああ、はい。父は暴風の魔人と呼ばれている、クロノですけど……」
最近、忘れがちではあったが、彼の両親はかなりの有名人である。
十五年前に終わりを告げた戦争で英雄と呼ばれていたのだから。
最初のコメントを投稿しよう!