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溜息を吐いて、生徒会室の前まで来るとノックをした。
「入りたまえ」
中から凛とした女性の声が聞こえてくる。
「失礼します」
扉を開けてまず目についたのは、リオンの存在だ。
何時もはいないリオンがそこに居たのだから驚く以外ないだろう。
「何、驚いてやがる」
「いや、だって……普段いないだろ」
「失敬だな。たまには俺だって遅れずにくると言っているだろう」
普段があれなので一切信用が無いリオンです。
「まぁ、そんな事はどうでも良い。此方へ来たまえ」
生徒会長は苦笑いしながら、ファイを呼ぶ。
二人の会話が非常に面白かったのだろう。
ファイは彼女の前まで行くと、立ち止まった。
「早速だが本題だ。君たちにまた依頼が来た」
「……また、ですか」
うんざりした風にファイは呟く。前と全く同じじゃないか。
「私とて不服以外の何物でもない。同じ人物を二度までも校外活動させるなんて」
一年では無く二年に依頼するべきである、と彼女は少しだけ怒気を孕ませた口調で言った。
普段は常に微笑んで余裕を見せている彼女にしては珍しい。
「……因みに依頼人は?」
「前回と同じ。カレイネル家当主だ」
また、あの人か……。
ファイは嘆息を吐いて肩を落とす。
カレイネル家。それは貴族の中でも別格の存在だ。
内政等に関してしばしば口を出すこともあり、王はそれを参考にしているという話だ。
そして、ファイの父、クロノ・デルシオンの実家でもある。とっくの昔に縁なんてものは切れてしまっているが。
まだ、英雄が無邪気な子供だった頃にひと悶着あったのだ。
「また、あのカレイネルがご指名ですか」
不服を極めつけた表情でリオンは言う。彼は誰よりもあの家と関わりたくないのだ。
理由としては、殺したくなるからだそうだが。
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