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「有難うございます!」
ファイは場をわきまえずに、大声でそう言って頭を下げる。
貴族でありながらも、一般家庭と大差ない生活をしている彼にとって、こんな所で食事が取れるのは非常に嬉しい事だろう。
「ちょっと、こんなもの本当に貰っていいの?」
目を丸くしたままのカレナは、リオンにそう尋ねる。眼は招待券に向いたままだ。
「ああ、いいのさ。だって俺興味無いし」
それにもう一枚あるし、と心の中で付け足しておく。
なんにせよ、彼にしては珍しく太っ腹である。
それよりも、彼が今興味がある事は、見知らぬ少女の事である。
記憶の中に引っかかっているのだが、どうにも思い出せない。
「……それよりもさ。あそこに居る人は誰?」
リオンはその少女を指さして、ファイに尋ねる。
「……ああ、クルドさんですか。そう言えば、リオン様は始業式をサボっていたから知りませんでしたね」
黙って読書をしている少女を見て、ファイはそう言う。
周囲ではもう、此方を見ている人はいないので、敬語のままである。
彼が崩天のルシフェルである、と言う事は当然の事ながらファイ達だけの秘密である。
カレナなどの一部の生徒には、リオン自身も崩天のルシフェルの弟子であると、一応誤魔化しているのだ。
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