少女たちの楽園へ……

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やる気のないヴァンの声を聞きながら、ファイは溜息を吐く。 幾らリオンでも、数百人もいる生徒を一人で護衛するだなんて無理な話だ。 しかも一ヶ所に固まっておらず、それぞれが散り散りになっているというのに。 リオンが分身でも出来れば話は別だが。 ……正直出来そうだ。 「で、お前らも十分に気を付けておけよ。自分のお嬢様が危険な目にあったら、それから護るのがお前たちの仕事なんだからな」 護るのも従者の仕事、とは言ってもエルにその必要性はないだろう。 むしろ護って貰いたいくらいだ。 何せ、エルはリオン・ヒルタレン、崩天のルシフェルそのものなのだから。 なお、ミルネから頼まれた仕事はそれだけでは無い。 内部に内通者がいるのかもしれない、との事だ。 にしては、一度も成功していないのもおかしな話だ。 内通者がいるのならその殆どが成功してもいい筈。 なのに、一度も誘拐に成功した例がないみると、それはデマでは無いのかとファイは見ている。 良家の中でも格の高い連中ばかりを誘拐しているらしいが、それは単なる偶然だと思う。 でも、本当に一体何の目的があって行動をしているのだろうか……。 「――以上だ。分かったな。って、転校初日から俺の話を聞いていなかったな。ファイ」 考え事をしていたファイは、突然呼び止められて驚いた。 「まったく、人の話くらい聞け」 「すいません、ちょっと考え事をしていました」 「まぁいいか。簡単に言うとだな。お前のあの超絶美少女ご主人さまが襲われそうになったら、身を呈して護れよって話だ」 ヴァンがそう言ったのを聞いてファイは溜息を吐いて言う。 「そんな事なら大丈夫ですよ。あの人は見た目あんなですけど、中身化け物ですから」 彼がそう言うとヴァンが目をそらしながら、こっそりと密かに呟く。 「……何処かの誰かにそっくりだ」 彼がそう呟いた瞬間に、どこかの女性がくしゃみをして、「あいつ、また私の悪口を……」と呟いたのはこの教師の知る所では無い。
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