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嫌な事を思い出してしまった所でホームルームは終わった。
終わると同時にファイの周囲には男子諸君が集まってくる。
当然、内容はエルに関してのことだ。その辺りは本当にユーレリウル学園の男子と大差ない。
「おい、あのお嬢様は一体なんて名前なんだ?」
「羨ましいな、あんな美人に使える事が出来て……俺のなんて……くっ!」
ワイワイガヤガヤ。とにかく騒がしい。
と言うか、見た目だけなら確かに美少女だが中身はあれすぎる。
この学校に来てまでサボりはしないだろうか、それだけがファイの心配事だ。
「あの人の名前はエル・ヴィエル・レグルスで、見た目は美少女だけどかなりの我儘だぞ」
溜息混じりに今までの日々を思い出しながらそう言う。
「それでもいいじゃないか。この下僕が私に逆らうんじゃないわよ! とか罵られるのも」
「……ごめん。理解できない」
流石に特殊な趣味だと言わざるを得ないが、周囲の男子が数人、「あれだけの美女ならそれも……」と呟いていたのを聞いてぞっとした。
人の趣味とは分からないものである。
そもそもエルはそんなキャラじゃない。と言うか、少なくともこの学校ではそんなキャラで通すはずがない。
「でも、お前も貴族の息子だったろう? だったら何で従者なんて庶民の仕事をやっているんだよ」
その質問には答え辛い。まったくもって答え辛い。
「いや、まぁ色々とあったんだよ。色々とね」
面倒臭いのではぐらかす。
説明もしたくない。わざわざ作った設定なんて。
「まぁ、貴族と言っても色々あるわな」
納得した風に一人が言うと同時に、他の全員が彼の言葉に流される。
本当に貴族と言っても色々あるのだ。面倒事を毎度のこと押しつけられたりと。
そんな風にファイへの質問攻めが続く中、教室の扉が勢いよく開いた。
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