少女たちの楽園へ……

19/58
前へ
/617ページ
次へ
嫌な事を思い出してしまった所でホームルームは終わった。 終わると同時にファイの周囲には男子諸君が集まってくる。 当然、内容はエルに関してのことだ。その辺りは本当にユーレリウル学園の男子と大差ない。 「おい、あのお嬢様は一体なんて名前なんだ?」 「羨ましいな、あんな美人に使える事が出来て……俺のなんて……くっ!」 ワイワイガヤガヤ。とにかく騒がしい。 と言うか、見た目だけなら確かに美少女だが中身はあれすぎる。 この学校に来てまでサボりはしないだろうか、それだけがファイの心配事だ。 「あの人の名前はエル・ヴィエル・レグルスで、見た目は美少女だけどかなりの我儘だぞ」 溜息混じりに今までの日々を思い出しながらそう言う。 「それでもいいじゃないか。この下僕が私に逆らうんじゃないわよ! とか罵られるのも」 「……ごめん。理解できない」 流石に特殊な趣味だと言わざるを得ないが、周囲の男子が数人、「あれだけの美女ならそれも……」と呟いていたのを聞いてぞっとした。 人の趣味とは分からないものである。 そもそもエルはそんなキャラじゃない。と言うか、少なくともこの学校ではそんなキャラで通すはずがない。 「でも、お前も貴族の息子だったろう? だったら何で従者なんて庶民の仕事をやっているんだよ」 その質問には答え辛い。まったくもって答え辛い。 「いや、まぁ色々とあったんだよ。色々とね」 面倒臭いのではぐらかす。 説明もしたくない。わざわざ作った設定なんて。 「まぁ、貴族と言っても色々あるわな」 納得した風に一人が言うと同時に、他の全員が彼の言葉に流される。 本当に貴族と言っても色々あるのだ。面倒事を毎度のこと押しつけられたりと。 そんな風にファイへの質問攻めが続く中、教室の扉が勢いよく開いた。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加