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誰が来たのかなんてファイにとっては、どうでも良い事だった。
いや、出来る事なら教師が来て、授業が始まる方が好ましいだろう。
そうすればこの質問地獄から逃れられる。
だが、現れたのは更に話をややこしくさせる人物だった。
それは小さくて、元気が良くて生意気だけど憎めない相手。
周囲の男子生徒、すなわち従者たちを驚かせ、背筋を伸ばさせる人。
「おにぃぃぃぃちゃあああぁぁぁぁぁぁんん!」
「ぐふぅっ!?」
腹部へ強烈なタックルが直撃した。
周囲にあった机やらなんやらを巻き込んで倒れこむ二人。
普通なら羨ましいのだろうが……とてもそうは見えない。
「おーい……大丈夫かー……?」
しんと静まり返る教室内。
一瞬の後に後頭部を抑え、声も無く悶える。
痛い、果てし無く痛い。一瞬だけ気を失っていた後に、すぐに気がついた。
どうせなら気を失ったままの方がありがたかったのだが。
訓練の結果と言うのはこう言った時に鬱陶しい。
例え気を失ったとしてもすぐに起きるように、体が慣らされている。
「シ、シルノ……! いきなり突撃して来るな……死ぬ……」
呻くように、ファイは胸の上で幸せそうな顔をしている従妹に向かって言う。
「いーじゃない! おにーちゃん!」
スリスリと子犬のように頬ずりするシルノ。
本当に変わっていない。
いや、変わり過ぎだと言った方がいいだろうか。
……なんにせよ、彼女のこの変容ぶりは如何ともし難い。
とりあえず、抱きつかれたままの上半身を気力のみで起き上がらせる。
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