少女たちの楽園へ……

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だが、ファイは体操服なんて代物を持っておらず、渋々ユーレリウル学園で使用していた、運動着を使用する事にした。 ユーレリウル学園だって、何も制服で戦闘訓練をする訳では無い。 当然、戦闘訓練にはそれに適した服装で臨む事がよしとされる。 しかしながら、常に万全の態勢で戦闘が出来るとは限られていないので、時折制服での訓練を行う時がある。 まぁ、滅多にない事ではあるが。 聖オラトリオの体操着は、まだ暑いともあって殆どの生徒半袖を着用している。 これから見るに、それなりの運動をするのだろう。長袖を着こんでいるのは、擦り傷などを気にしているのかもしれない。 まぁこの様子だと、運動はしてもそれ以上の激しい運動はしないみたいだ。 因みに、ファイの服装は上下長袖。 夏場には暑いったらありゃしないが、運動性は高く、様々な装備を保持する事が出来る点を見ると、非常にいいものであるだろう。 この学校では無粋な気もしないでは無い。まぁ、その辺りは本職を忘れない為に必要だろう。 「なぁ、体育の授業って一体何をするんだ?」 手早く着替え終えたファイは、隣の席の生徒に話かける。 見た目よりも早く着替えられるのも、良い所なのかもしれない。 「え? ああ、体育の授業って名目になっているけど、簡単な体術とかをやっているんだ」 少年はファイから話しかけられた事に少し、驚いた風にしながらも答える。 「簡単な戦闘訓練みたいなものか」 「戦闘訓練……じゃないかな。護身術みたいなものだし」 少年は苦笑しながらそう言う。 ファイの括りから言ってしまえば、護身術も立派な戦闘の訓練である。 まぁ、彼らからしてみれば相手の命を奪う事を目的としていないのだから、違うものなのだろうが。 「へぇ、どんなのか楽しみだな」 純粋に戦人としての好奇心だろう。 未だ弱い自分を高める事が出来る環境がここにもあったのだ。 それなりに嬉しい事だろう。 流石に一週間も訓練が出来ない環境に居ては、息が詰まる。 まぁ、それに堪えるのも含めた今回の任務なのだから、諦めるべきだと思っていたのだ。 それが意外にもあったので、それなりに嬉しい。
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