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それにちょっとした息抜きにもなる。
「珍しいね。戦いが好きなんて」
少年はそうファイにそう言う。
「俺は戦いが好きな訳じゃないさ。でも、戦う時が来たら力がないと何も出来ないじゃないか」
護られるとは、護る人がいて初めて意味をなす。
誰も護ってくれないのなら、自分で守るだけ。
「そんなもの、なのかな?」
「そんなものだ。特に俺達は。護るのが仕事なら自分くらい守れるようにしないとな」
そう言って、ファイは笑う。
「なんか先生みたいな事を云うんだね」
「俺の先生の受け売りだからね。所で何処で、授業はやるんだ? ええっと……」
「外だよ。運動場。それと僕の名前はビリー。ビリー・ブラック」
「ありがとうビリー。まぁ遅れても拙いし行きますか」
ファイは呟くと、教室から出て行く。
この調子ではリオンの方も少しばかり厄介な事になっているのだろう、そう思っていた。
まぁ、嘘八百が当たり前のリオンには造作も無い事に違いない。
欠伸をひとつすると、刀を取り出す。
紅い鞘、炎天牙だ。まぁ、名前なんてあってないに等しいものだが、ある方が何かと愛着が沸くと言うもの。
リオンの紅蓮や、母の炎姫に比べて出来は良くない。
よくないが、魔武器というものは、持主の魔力を吸収して成長するものである。
個人の戦術にあったように、ゆっくりではあるが馴染んで行くのだ。
その為、新しい武器等はどうも体に合わないと言う事がある。
物は同じなのに、何故かしっくりと来ない。それこそが、魔武器の特徴である。
似ているものなら幾らでも存在しているが、同じものは二つと存在しない。
故に、炎姫は唯一無二の、母の形見である。因みに、現在の所有者は、彼女の父たるリオンである。
「運動場まで来たのは良いが……」
誰一人として武器を持っていない。護身術の訓練だと聞いていたので、一応武器を出しておいたのだが、不必要だっただろうか。
刀を腰に携えたファイは明らかに異端の存在である。
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