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内心、始業式にも出ていなかった貴方が悪いです、と愚痴るが手元にある食事券の恩を無下にする事も出来ないので、ファイは彼の質問に答える。
「彼女は転校生ですよ。始業式の日に教室に来たんです」
「……へぇ、『転校生』ねぇ……」
何処か含みのある言葉を呟くリオン。
実際彼にも、確信がある訳では無い。
何処かこう、頭の何処かに引っかかっているのだ。
見覚えのある顔ではあるのだが、一体何処の誰だったかを思い出せない。
何百年前、ではない。
つい最近、ここ十年の間に出会っている筈なのだが。
それにクルド、という名前にも引っかかる。
クルド、クルド……もし、もしも、だ。
彼女が偽名を使って学校へ通っているとしたら、どうなるだろうか。
偽名というのはとっさには考えられない。
自分の名前をもじったものや、役職名を言い換えたりしたものが多い。
事実リオンも、偽名として昔の名前の一部を使用した。
クルド、という名前を思い出していると一つの役職を思い出した。
いや、それは役職というよりも二つ名といった方が正しいかもしれない。
それを知っているのは限られた人間ばかり。
具体的な例をあげるのなら、ギルドの高ランク所持者。S以上を持っている人物に限られる。
下手に刺激して、此方の正体がばれるのは非常に避けて通りたい事。
しかし……。
リオンはぼんやりと考える。
一体誰が、彼女をこの学校へと送り込んで来たのだろうか?
「それにしても珍しいですね。リオン様が女子に興味を持つなんて」
何処か好奇心を孕んだ表情でそう言うファイ。
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