少女たちの楽園へ……

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次にファイは、魔法をヴァンに向けて放つ。 「フレイムソード!」 簡単な剣の形状をしたそれは、一直線に敵へ向かって突き進む。 「ちぃ!」舌打ちをすると、ヴァンも魔法を使用して、壁を作りあげそれを防御する。 その対応の早さは一線級の代物だ。 ファイ達の担任に引けをとらない。 ヴァンはファイが視界に入らなくなったからと言って、その場所が分からない訳では無い。 その為、彼はさらに魔法を使用して、攻撃を加えていく。 足下から次々と現れて来る棘を、華麗なステップで回避していく。 風魔法を使用して、一瞬だけ空中を浮遊すると、ファイは刀に溜め込んだ魔力を一気に解き放つ。 「剛炎一刃!」 抜刀と同時に突き進んで行くそれは、先程とは比べ物にならない程の威力、切れ味を持っている。 ヴァンの構築した壁を飴細工のようにいとも容易く溶かし切る。 それだけで勢いは止まらず、そのまま背後まで斬り落とした。 だが、そこに居た筈のヴァンは姿を消していた。 上空へと高く高く跳躍していたヴァンはそのまま、重力加速度に乗って、大剣を振り下ろす。 そんな単調な攻撃、ファイが気付かない訳が無い。 この際にやってはいけない事が受け止める事である。 どんなに腕力に自信があっても、決して質量の大きい物質が垂直に落ちて来た際に受け止めてはならないのだ。 重力加速度により、加速した物質を受け止めた際に来る衝撃は、普通に振り回した際のそれとは違う。 衝撃も威力も桁外れだ。 受け止めたら、腕が砕けるだけでは済まないだろう。 「そんな技、普通使いますか?」 回避して距離をとったファイは、ヴァンにそう尋ねる。 「お前なら避けてくれると信じていた」 「冗談きついですよ」 引き攣った笑みを浮かべるしか無い。 直撃を受ければ、重傷は免れない。 それでも、高揚する心。 間合いに長く居続ければ、圧倒的に不利。とは言っても、勝つことは考えない。 引き分けに持ち込む。 勝てないなら引き分け。 生き残る為に、それを考えろと言われたためだ。 消極的ではあるが、尤も効果があるだろう。 生きる為に何を選択するのか、それが大切なのだ。
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