少女たちの楽園へ……

31/58
前へ
/617ページ
次へ
だが、幾ら剛炎を持って捩じ伏せても、数は一向に減る気配を見せない。 当然、それの対応にファイも追われる。 厳しいが無理な数では無い。 ただ、無駄に魔力を消費したくはないので、少しずつ魔法を使用する。 避ける事が出来る弾はすべて回避。 回避不可なものは、刀と魔法で全て迎撃。 リオンなら見切る事は出来るのだろうが、生憎とファイにはそれが出来ない。 だが、それにばかり気をとられて、新たな魔法が発動した事に気がつかなかった。 正直に言ってしまおう。 只の巨大な岩がファイに向かって凄まじいスピードで飛んできている。 直径は明らかに彼の身長を超しているそれは、もはや回避不可。 ならば、受け流すまで。 炎を刀に纏わせ、まずは細かな飛礫を排除する。 そして次に、風魔法で強い風を巻き起こし、岩の軌道を変えるアシストをする。 そして、最後に刀と鞘に風属性の魔力を流し、真横から岩を叩いた。 圧倒的な質量を持った物質の軌道を変えるのは非常に難しい。 だが、風属性の力によりなんとか背後に受け流す事が出来た。 ほうと息を吐いた次の瞬間だ。 大剣がファイの首に添えられたのに気がついたのは。 「やれやれ、終わりだ」そう言うとヴァンは剣を収める。 細かな攻撃で注意を前方にひきつけ、更に大きな攻撃で意識を完全に前方へ固定させる。 その隙に移動して、死角に回り込み、止めを刺す。 マジックでよくある事だ。 「やれらましたね。派手な攻撃で勝負すると思っていたのですが」 刀を鞘に納めてファイはヴァンにそう言う。 やはり先入観があったのだ。 「本当はそっちの方が好きなんだがな。流石にそれやると、お前が壊れるだろ」 「……よくおわかりで。いや、あんまり無茶な事をされずに済んで助かりましたよ」 この時ほど、担任が変わっていればよかったのにと思う瞬間は無かった。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加