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模擬戦イコール死闘につながるような担任はまっぴらごめんである。
今くらいの手を抜いた戦闘の方がよほどやり易い。
因みに、ヴァンも手加減をしていたらしいが、ファイもほんの少しだけ手加減をしていたりもする。
その辺りは、傲慢でもなんでも無く、安全面への配慮という事だ。
一学期の期末直前の模擬戦の様に、魔法陣を使用した強力な魔法は一切使用しないつもりだった。
相手の出かたにもよるが、魔法陣はさしずめ低級魔法が良い所だ。
模擬戦で死んだり殺したりするのだけは勘弁である。
二人が向かい合っていると、今まで戦闘に夢中になっていた生徒達から、歓声が上がる。
いや、目の前で息も詰まるような試合を見せられたら、誰だってこうなるだろう。
今くらいの戦闘で、歓声が上がる事に対して逆にファイがおどろいた。
「ど、どうしたんですかね」
「あいつら、まともな戦闘を見たことが無いからなぁ。面白かったんだろ」
「……あの位でよく歓声が上がりますね」
「見た目が派手ならなんでも良いんだよ」
そんなものか、と思いながら周囲を見回す。
まぁ、確かに地面は抉れているし(主にヴァンの魔法で)あれだけの炎があがったのだ。
派手以外の何物でも無いだろう。
事後を見れば、どんな激戦が繰り広げられたのだろうと思う事は間違いない。
「あの時と比べたら派手でもなんでも無いんだけどなぁ」
当然思い出しているのは、期末前の模擬戦。
魔法陣に氷に水、水蒸気、炎、風、土、ありとあらゆるものがあったように思える。
というか、切り札を出しても気を失うどころか、手傷も与える事が出来なかったのは、脅威以外の何物でも無い。
「なんだ、これよりも派手な事をしたのか?」
ヴァンがファイの呟きに反応する。
「ええ、まぁ……」
言葉を濁す。言いたくない。
本当なら思い出したくも無いのだ。
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