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死にかけた事なら何度かあるものの、流石にあの時の恐怖はそれに匹敵するほどだった。
「まぁ、なんだ。英雄の息子とは言ってもなんだかんだで苦労はしているんだな」
ぽんぽんとファイの肩を叩いてそう言う。
「はい」と弱々しく返事をして、溜息を吐く。
ヴァンは生徒達の方を向いて言う。
「さて、見て貰ったと思うが、これが本職の仕事だ。従者であるお前達がこれと同じだけやれ、とは言わないが、最低限これについて来てくれることを願っている」
教師らしい言葉だ。全くもって同じ事をやれというのは非常に酷な話である。
「主人を護り、自分を守るに必要な事だ。分かっていると思うが、お前たちにだって同じ事は出来るんだからな」
ファイを指し示して言うヴァンに、生徒達は口々に「無理だ」などと言った弱音を吐きだす。
確かに、現実で見せられた事は今の彼らには無理だろう。
というか、出来て貰ったら困る。
「無理な事じゃあねぇよ。こいつだって、お前らと同じ人間で、高校生だぞ」
「だけど、父親はあの暴風の魔人じゃ無いですか」
尤もな意見が生徒から出た。
全く、血筋というものはいつになっても足かせになる。
「確かにそうだろうな。お前達とは『違う』環境で『育った』んだからな」
ヴァンは苦笑しながら、生徒の言葉に答えた。
それはまるで自分にあてはめるかの様な言いぶりだ。
「お前たちだって、もし同じ『環境』で同じ『育ち方』をすれば、能力に個人差はあるだろうが、どれも似たような実力になるだろうな。まぁ、こいつはすべての人物が同じように成長したと仮定したときの話だが」
「どういう事ですか?」
「いいか、お前たちには一人一人性格がある。魔法の属性がある。勉強に明け暮れる奴もいれば、訓練一筋の奴だっている。中にはテレビばかり見ている奴だっているかもしれない。だとしたら、それぞれに個人差が生まれて当然だ。もちろん、訓練を怠らなかった奴は強い。才能がある奴も強い。勿論、訓練も怠り、才能も無い奴は弱い」
リオンの発想とどことなく似ている。
彼は努力をしたところで無意味になると、言っているのだ。
その逆に才能も信じている。
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