少女たちの楽園へ……

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ファイはそれを捌きながら、ゆっくりと距離を取る。 少しだけ、本気を見てみたくなったのだ。 理由は知らないが、手加減をしているのかそれとも意図的に隠しているのか。 見極める為の技の一つ。 ボクシングの様なスタイルを止め、ファイがとったのは掌を開いて相手へ向け、力を一切いれないスタイル。 ワルキがトンファという武器を選んだ理由は、小賢しい技は苦手で力押しの一撃を好むから、である。 だが、彼も武術を学んでいるうちの一人。 技術も必要である事は気付いている。 その中でも、この構えはひどく消極的で好まないものだ、と言っていた。 その理由はファイにもわかる。 相手の力を利用する構えなのだ。 これは、攻撃を受け止め、受け流し、その力を利用して反撃する。 此方からの攻撃はほとんどないに等しい。相手に対する威嚇、それ以外を全くしない攻撃だ。 ふぅと息をひとつ吐いて呼吸を整える。 荒れていては無理だ。 気付いたのか気付かないのか、ビリーはそれに突っ込んでくる。 先程と同じように、気のない拳を突き出してくる。 それを掴んで足を払い、そのまま投げ飛ばす。 この程度の速度なら、造作の無い事。 ふわりとビリーは空中で一回転をすると、そのまま着地する。 やはりだ、やはり隠している。 あれだけの動きをしたのに、攻撃があれでは意味が無い。 成程、担任の気持ちが少しだけ分かった気がするファイ。 一撃で沈める気はないにせよ、ここまでコケにされた気分は初めてだ。 意地でもその化けの皮をはがしてみたくなる。 再び、攻撃的なファイティングスタイルになると、そのまま突撃する。 相手を追い詰めたいときは攻めて攻めて攻めまくる。 それが一番だ。 まずは拳で突いて、その次は殴る。 先程とは違い速度は倍だ。 それすらもあっさりと避ける。 次は足技もふまえての連続攻撃。 本当なら受け身の技を、最も得意としなければならないが、この際どうだっていい。
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