少女たちの楽園へ……

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正直このしゃべり方は面倒。 肩がこる。 「次の授業は魔法実技ですよ。場所は中庭です」 「そうですか、ありがとうございます」 教科書を持って中庭まで歩いて行く。 魔法実技。 この学校にも在ったのか。 これでようやく退屈しのぎが出来そうだ。 つまらない授業よりは面白そうだ。 おんなじ魔法を撃つだけの小学中学みたいなのだったら勘弁だが。 中庭まで来たリオンは途中で移動教室の途中であろうシルノとすれ違う。 互いに無言で瞳だけを交わす。 リオンは殺意を向け、それに対抗してシルノは敵意を向ける。 愛しい兄をとられたくないのだろう。 エルがリオンであるという事を知っている唯一の人物だ。 ばらしたりしたら殺す、邪魔をしても殺す。 ファイには悪いが、こいつは殺しても構わないと思っているのだ。リオンは。 中庭には、ちらほらと生徒達が集まって談笑していた。 そう言えば、担当教師は一体誰だろう。 そう思いながら、ゆっくりと掌に水の球を浮遊させて遊んでいると、担当教師がやってきた。 担任か。名前は……忘れた。 リオンにとってはそんな瑣末な事はどうでもいい事なのだ。 と言っても一応思い出す。 アシュレイ、だった気がする。 (アシュレイ、愛称はたぶん……リーか。随分と可愛らしい名前だな) 必死で欠伸を堪えながら水玉を消した。 中庭へと出て来た生徒達は全員、彼女の周囲に集まる。 成程、声をかけないでもあっさり集まってくれるか。本当に育ちが良い連中らしい。 腹の中までは知らんが。 「御機嫌よう、皆さん。魔法実技の授業です。今日は転校生のエルさんに、魔法の実演をやって戴きたいと思います」 ちょっと待て聞いてねぇぞ! 叫びたいが飲み込む。 「彼女の魔法はとても凄いものだと校長先生に教わりましたので、皆さんのお手本をお願いしたいのです。では、エルさん、前へ」 勘弁してくれ、本当に。 渋々ながらエルはゆっくりと前へと歩み出る。 その足取りは優雅に、気品にあふれたもの。心の底にある事など、一切分からない。
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