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「では、先生。どのような魔法を、何処へ向かって放てばよろしくて?」
杖を取り出してエルは尋ねる。
一応、杖も武器として呼び出せるのだ。
「どんな魔法でも構いません。あそこにおられる、ヴァン先生に放って下さい。大丈夫、彼はとても強いですから」
「……分かりました」
人めがけて撃っていいのか? 激しく疑問を覚えるエルだが、とりあえず杖をヴァンへ向ける。
「お気を付け下さい、ヴァン先生。では、行きます」
それと同時に複数の剣を模した炎がヴァンへと向かう。
その数は八。
ヴァンはそれを見ると土の壁で防御する。
「おみごとです。エルさん」
生徒達の中からも拍手が舞い上がる。
この程度でよかったのだろうかと、激しく疑問に思うエル。
この程度の魔法なら学生でも使う奴はいる。
その中で、やはり一人の女子生徒が手を挙げた。
「先生、私はエルさんと魔法で勝負がしてみたいです。宜しいでしょうか?」
「あら、ビーチェさん。どうしてですか?」
眼を丸くしてアシュレイは理由を少女へ尋ねる。
幾分か気の強そうな瞳をしている彼女は、エルを見て言う。
「やはり私としても間近でエルさんの魔法を見てみたくなったのです」
エルには分かっている。所詮はこれが建前であるという事を。
本音は恐らく「こんな女よりも私の方が魔法は上手いわ。眼に物見せてやる」とでも思っているのだろう。
プライドが高いというのも難儀だ。
それにしても、とエルはヴァンの方を見る。
こんな学校にあんなできる男を置いておいていいのだろうか?
あえて直撃しないコースで撃ったのだが、全てを壁で貫通させないというのはすごい事だ。
しかも、あの幅であの薄さ。
幾ら手加減をしていたと言っても、並みの防御なら貫く威力だった筈。
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