少女たちの楽園へ……

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焼き尽くす炎が、ビーチェを飲みこもうとした時、一つの水球が彼女を包み込んだ。 そうして炎を相殺した。 「やれやれ、やり過ぎですよ。エルさん」 使ったのはアシュレイでも、ヴァンでも無い。 「学園長!」 そう、この学校の学園長こと、ウルドである。 「ウルド、さん」 「あなた少しやり過ぎよ。全く若いというのは羨ましいわね」 歩み寄りながら美女は言う。 美しい女性。青臭い子供の乳臭さは感じられない。 まさに美女、というのが良いだろう。 邪魔をされたエルは不機嫌極まりない。 天狗っ鼻を消し炭にしてやろうと思っていたのだから。 風属性の魔法でウルドの耳元で声を発生させる。 「余計な事をしてくれたな、糞ビッチ。そんなのだから何時まで経っても行き遅れたままなんだよ年増」 当然、耳元で振動させただけなので、ウルド以外の他の人物には聞こえていない。 「あらあら、そんなに体力が有り余っているのなら、私と遊びましょうかお嬢さん」 笑っているが目が笑っていない。 完全に切れたらしい。 というか、地味に気にしている事らしい。 「構いませんが、手加減はしません事よ?」 授業そっちのけで、火花を散らし合うえるとウルド。 これで退屈しのぎが出来る! さぁ! 死合おうでは無いか! 杖の他に魔導書と箒を取り出して臨戦体勢に入る。 古風な魔女。昔々の装備である。 両者の周囲にはありえない程の魔力が渦巻いている。 ヴァンとアシュレイ両名の教師は、生徒達を安全な場所へと避難させるだけで精一杯。 二人を止める事なんて考えても無かった。 彼らの魔力は自分のそれより遥かに上回っている事が、容易に理解できたから。 防御壁は一応張らない。生徒達の参考になると思っていたのだ。 ただ、危険になれば地属性魔法で防御するのだが。 先程エルと勝負をした少女も、ヴァンたちの背後に居る。 「あら、それは此方の台詞です事よ?」 ウルドは魔法を発動する。 水属性の魔法、スプレッドウォーターだ。 エルの体は水の流れに飲み込まれた。 「あらあら、造作も無い事ですね」 「何処を見ていらっしゃるのかしら?」
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