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飲まれたと思ったがエルは箒に腰掛け、宙に浮いていた。
「あら避ける事が出来たんですね」
「当たり前です。私を誰だと思って?」
彼女がそう言った瞬間に、彼女を取り囲むようにして、大量の炎のナイフがあらわれる。
呪文の詠唱も魔法名も宣言していない。
一体いつ魔法を使用したのだろうか。
「なっ!」
「口を大きく開けるのははしたなくてよ?」
杖を真っ直ぐにウルドへ向けると、ナイフの先端もウルドへ向いた。
そうしてひと呼吸ののちに、ナイフ群は目標へ向かって突撃する。
それに対処するために即座に魔法を使用する。
互いに動かないまま、魔法の撃ち合いが続く。
流石はウルド。奇襲にも等しい攻撃だったというのに、完璧に対処している。
互いに水と炎がぶつかり合う。
「うふふ、やりますわね。流石はウルドと言ったところですか」
「あら、私の事を知っていらっしゃったのね」
「ええ、当たり前ではないですか。貴方の事を知らないでこの学校に通っている生徒がいらっしゃって?」
優雅な会話を繰り広げながら、彼女達は一切の手を抜いていない。
まだ互いに余力を残しているという事だろう。
「我、永久の氷の大地を顕現せし、その凍てつく檻にて、咎人を眠りへ誘わん」
魔法を放ちながらも、新たな魔法を構築する。
その詠唱に聞き覚えがあったエルは、すぐさま魔導書を紐解いた。
「プリズンオブフロスト!」
丁度エルの真下にあたる地面から、氷の柱が彼女を覆いこむように生える。
それに対抗するように、地面が歪み、氷柱を包み込み、そして握りつぶす。塑性変形しない氷はあっという間に砕けた。
遠距離では勝てない。そう判断したウルドはすぐさま剣を取り出してエルへ肉薄する。
あのナイフの雨の中を多少の防御のみで潜り抜ける事が出来たのは、やはりかなりの技量がある恩恵だろう。
魔法だけが上手くては、今の世界では生き残れない。
魔法を主戦術とするエルでは、近接戦に対応しきれないと判断したのだろう。
だが中身は崩天のルシフェル。
当然、今回の彼女もそれを忘れていた訳では無い。
「私に、そのような手は通用しません事よ?」
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