少女たちの楽園へ……

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魔導書を宙へ放り投げ、杖の先端から氷の剣を構築する。 地属性の物質強化も追加してあるため、そう易々とは砕けない。 互いにぶつかり合う音が響くと鍔迫り合いへと持ち込んだ。 「私にこのような小手先が通用すると思って? 古風な魔女は貴女が思っているよりも剣の心得が在りますのよ?」 鍔迫り合いの中、エルはウルドに向かってそう言った。 氷で作り上げた剣から、煌めく欠片が落ちる。 流石に氷では鉄に敵わない。 「そう。そうね。貴方はとても強かったわね」 妙齢の美女は剣に炎を纏わせる。 氷ごと溶かし切るつもりなのだろう。 だが、そんな風に容易に行くほど、エルの魔法は甘くない。 「ふふ、その程度では私には小手先ですのよ」 ウルドの目論見など、簡単に見抜き対処。 熱吸収だ。炎の熱を吸収して、氷を溶かそうとしてない。 実に安易な考えだが、効果的ではあっただろう。リオン以外の人物になら、だろうが。 無駄だと悟ったウルドは炎を納め、風を纏わせる。そう、彼女は選択を間違えたのだ。 気付いたエルは距離を取る。 箒の上であれだけの事をやるなんて、常識外れも良い所だ。 少なくとも、既存の魔法における常識とは一線を画しているだろう。 外野は繰り広げられる激戦をただ、黙って見るしか出来ない。 風魔法で空中浮遊しているウルドはすぐさま距離を詰めて、剣での攻撃をかけようとする。 だが、その前にエルの持っていた杖が、轟と音を立てて燃え始める。 向かってくる剣をその杖で受け止め、受け流す。一切の力は必要としない。 「……炎剣? いや、違うわ……もしかして!」 エルの剛炎を纏う杖を見て、暫し思案し、そして答えを見つける。 「あら、お気づきになりましたか? 貴女の思っているとおり、これは災厄の魔杖です事よ」 そう言って一振り。 形無い炎の剣はウルドを引き裂かんと振り下ろされる。 咄嗟に魔法で防御。だが、それすらも時間稼ぎにすぎない。 即席の防御魔法なんて、簡単に斬り裂いてゆく。 ぶつかった一瞬を利用して、美女は跳躍して回避した。
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