少女たちの楽園へ……

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災厄の魔杖なんて知っている人物が少ないだろう。 もし、簡単に言い表すとするのなら……。 「レーヴァテイン……冗談は止めて戴きたいものです」 紅蓮の炎を携えたその姿は神々しくもあり、また畏怖の対象でもある。 「あら、現実をご覧になったらいかがですか? 紅蓮の炎を纏う杖に、貴女は一体どれほどの力を見せて戴けるのか、楽しみですわ」 剣をひと振りして、実力を見せつける。 「貴女はどう足掻いても、私には勝てませんよ」 その一言がウルドに火をつける。 先程の発言もそうだったが、逐一癪に障る発言を好むらしい。 まぁエルにとっては、その位の悪態も言いたくなる相手なのだが。 この件の原因はこいつにもあるのだから。 観戦していたヴァンとアシュレイは、目の前の古風な魔女に驚くしか出来ない。 ウルドに、天下のノルンに、勝てないと言い切る少女が目の前にいるのだ。 驚かない方がおかしい。 自信以外感じられない口調。いや、自信ではなく、確固たる事実を突きつけた心算なのだろう。 「それに貴女は、どうせ私から魔導書を取り上げれば、どうにかなると思っていたのでしょう? 実に甘い考えです事」 図星。魔導書こそが彼女の魔法が生まれる根源。 それを奪いさえすれば、状況は五分に持ち込めると思ったのだ。 「残念でしたわね。魔導書が私の手に戻る前に、既に決着はついていたのです」 彼女がそう言うと杖を一振り。 その途端に足下から三重の魔法陣が描かれる。 それが光り輝いた次の瞬間、一つ目の魔法陣から氷が、二番目から炎が、そして三番目からは土が彼女を覆う。 さしずめ彼女が使っていた牢獄の魔法を、多属性複数の魔法を同時に使用したと言った所だろうか。 氷が囲み、炎が囲み、そしてその両方を土が囲う。 こうして、脱獄不可能な牢獄が、完成したのだ。
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