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リオンはなれた口調で彼女に話しかける。
これでも貴族相手に、随分と慣らした方だ。
特に変に自意識の高い貴婦人を相手にする時など、こう言って話しかけてやると、すぐにその分厚い化粧の上からでもわかるように、頬を紅くするものだ。
まあ、あくまでも崩天のルシフェルの時の話である。
少女は何も言わずに、首を縦に動かす。
彼女のその少し赤みがかった短髪が、さらりと揺れた。
「……リオン・ヒルタレン。この王立ユーレリウル魔法学院高等部において、稀に見る成績不良生徒」
蒼い瞳になんの感情も見せずに、鈴の鳴るような声で口早に話す。
それを聞いたリオンは苦笑する。
苦笑一つで済ませられるとは、なんとも彼らしい。
そんな二人をクラスに居る生徒は、全員注目している。
当然、リオンの落ちこぼれという言葉に対して、非常に疑いを持っている委員長も含めて。
特に彼女の場合は、まじまじとリオンの事を見ている。
「やはり有名ですか。まぁ、貴女はその前からご存知でしたかな?」
ぴくり、と彼女の眉が動いたのをリオンは見逃さなかった。
「……いいえ」
彼女は首を横に振って、リオンの言葉を否定する。
「おや、流石にご存じではありませんでしたか。学校外にまで、噂が広がっていると思っていたのですが」
彼女はもう一度知らないと言い、目線でこれ以上の用が無いのなら読書に戻らせて貰う、と態度で示す。
リオンとしても、ここでの鎌をかける事が出来たのだから、問題は無い。
「それでですね、実は先日このような物を手に入れたのですよ」
彼女の目の前に、先程ファイに見せたのと同様のチケットを見せる。
それを見ても、彼女の眼はやはり驚きの色も何も見せない。
興味がないだけか、それとももっと別の理由か。
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