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最後の一枚にありったけの魔力をつぎ込んで、被害を最小限に抑え込もうとするヴァンとアシュレイ。
互いに自分の限界ギリギリの魔力を費やす。
そうして、エルの攻撃を防ぐ事が出来た。
周囲の建物には黒く焦げたような跡がついている。
「あらあら、威力を押さえましたから何とかなりましたね」
いつの間にか自分の手元に呼び寄せていた箒に腰掛けそう言う。
「本当に化け物ね、貴方という人間は」
自分の前方にだけ何とか障壁を張って堪え切ったウルド。
余力など、残っている筈も無い。
「あら、ありがとうございます。貴女にそう言って戴けるのなら、家宝を持ち出した甲斐があるというもの。それで、まだやりますか?」
「……遠慮させて戴くわ。流石に同じ魔法を二度も受けきる自信は無いもの」
「私も、ですわ。流石にあれと同じ魔法を二度撃てる魔力は残っておりませんもの」
確かにあれほどの魔法を放った後では、次に使う魔力など無いに等しい状態だろう。
普通なら、だが。
生憎と普通じゃないのがエルである事は言うまでも無い。
エルの装備は全て古風。何百年も前の代物。
「よく言うわ。息切れ一つしていないのに」
「あら、ウルド様。貴女こそあれだけの魔法をお受けになられたのに、服に傷一つついておられませんわよ」
互いにまだ余力が残っている事を確かめあう。
微笑みながらのその会話に、幾人の生徒が震えたか。
いや、生徒だけでは無い。ヴァンやアシュレイですら、背筋に悪寒が走った。
あれほどの魔法を直撃しておいて無傷のウルド。そして、あれほどの魔法を放って置きながらも魔力に余裕を見せるエル。
天上の争い、というのはこのような事を指し示すのだろう。
全く、追いつく事が出来ない。
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