少女たちの楽園へ……

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追いつけない実力。それをたかが十数年生きて来ただけのエルが持っているのも、可笑しな事だが、今の二人にはそんな事に考えを回している余裕はなかった。 エルはゆっくりと地上へ降下し、箒から腰を下ろす。 箒は変らず、空中に固定されたままだ。 「先生、申し訳ありません授業を妨害してしまって」 彼女の言葉に、呆けていたアシュレイは気を取り戻す。 「あ、いえ。問題ありませんわ。では、みなさん。授業を再開しますわ」 そう言って、彼女は全員の注目を自身へ向ける。 「ああ、アシュレイさん」 ふいにウルドが声をかける。 「なんでしょうか?」 「エルさんに講師をお頼みしたいのですが」 「え? エルさんに、ですか?」 流石に戸惑いの表情が隠せないアシュレイ。 確かに先程の戦闘では華々しい魔法を使っていたが、流石に子供に講師の真似事をさせるのは気が引ける。 そもそも、出来るのだろうか。 「そうです。先程の戦闘で理解して戴けたでしょうが、彼女には私達と同じ程の魔法を操る技術があります。そこで、彼女に講師をしていただきたいのですよ」 ウルドの柔らかだが有無を言わせない話し方にアシュレイは、思わず無言で首を縦に振る。「宜しいですね? エルさん?」 「……そのお役目、謹んでお受け致します」 表面上では文句が無いように振る舞う。 だが、その言葉と同時に、先ほど同様耳元で「後で覚悟しろよ」と魔法で言うエルであった。 彼女の本音としては、なんでこんな糞面倒なやらないといけないのだろうか、と愚痴を漏らしたい気分だ。 どうせ、本当は自分の魔法に関しての知識を広める事が目的なのだろうけれど。 その全てを曝け出してやるものか。 こんなお嬢様風情に魔法を教えたところで無意味だという事くらいは、理解しているつもりだ。 「では、唐突ですが講師の命を受けた、エル・ヴィエル・レグルスです。早速ですが、貴女達に一つだけ問題を出したいと思います」 エルは生徒達を前にしてそう言うと、魔法を使用する。
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