少女たちの楽園へ……

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「私は先程、大きな魔法を使用しました。では、貴女方に同じ魔法を使えますか?」 少し意地の悪い質問だ。同じ魔法なんて、誰一人使える訳が無い。 使える奴がいたら、そいつは天才だ。いろんな意味で、天才だ。 生徒達からの返答はない、つまり……。 「使えませんわよね。使えましたら、私の半生が否定されてしまいますわ。ですが、あんな魔法を本来、貴女方は使う必要性は全くありませんのよ。もちろん、使える必要性も」 当り前だ。当たり前すぎる事だ。なんで、戦いもしない奴等が、同じ魔法を使う必要性があるんだ。 それに無意味に魔力ばかり食う魔法も。 「通常、上級魔法が使えたら凄い、という認識が貴女方にはありますね。でも、上級魔法を使用出来たからと言って、それ即ち強い、という事には直結しません。 むしろ全く違います。貴女方は一切の上級魔法を使う必要性が無いのです。上級魔法を使用出来る方が強いという発想は今すぐお捨てになられた方が賢明ですわ。 理由なんて至極簡単な事です。緊急事態となり、武器も何もない状態でどうやって身を守るのでしょう。緊急を要する状態であるのに、わざわざ詠唱までして上級魔法を使用するよりも、初級魔法を使用して牽制した方が早い。当り前でしょう。 ましてや貴女方は淑女。でしたら、控え目な魔法を使用する方がよろしいですわ。それに、自分の身も守れない様では、淑女とは言えませんもの」 エルがそう言い終えると、一人の生徒から手があがった。 「なんでしょうか」 「でも、エルさんは先程上級魔法と思えるような魔法を、詠唱無しで使用していましたよね?」 それは当然の疑問だ。 本来、詠唱が無ければ使用する事が難しい魔法を、すぐさま使っていたのだから。 詠唱無しで上級魔法を発動するのは、ウルドといえど難しい。
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