少女たちの楽園へ……

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当然、エルが上級魔法を詠唱無しで発動する事が出来るのには理由がある。 当り前の事だ。 「ふふ、それはこれから説明いたしますわ」 くすりと笑うと、彼女は息を深く吸う。 「貴方達には縁が遠いかもしれませんが、魔法陣を使用するのです」 魔法陣を使う、という彼女の言葉を聞いて生徒達はざわめく。 彼女達がそれを使うのは、長距離を移動する時くらいだ。もしくは、何かのものを移動させる時くらいか。 とにかく、少女達の魔法陣に対するイメージは、移動に関するものばかりだ。 「普通、魔法陣と言われると、移動に関するイメージが大きいようですが、まぁそれも間違いでは無いでしょう。何故なら転移魔法は、座標の指定が無ければいけませんから。入口があれば、出口が必要なのは当然の事。座標の指定を人間自身で行うには非常に難がありますから。 原理から言ってしまえば、私が使ったものも、転移魔法とは大差ありません。同じものです。魔法陣とは本来、魔力を込めるだけで魔法が発動するものなのですから。 と言っても、分かりにくいですわね。簡単に説明しましょう。貴女方は電球に光をつける為には、何が必要ですか?」 「電気です」一人の生徒が答える。 「そう、電気です。電気がなければ電球はつきませんわよね。つまり、魔法陣は電球で、魔力というのは電気になるのです」 「でも、そうだとするのなら、魔法は同じものしか使えませんわよね」 「確かにその通り。一つの魔法陣から発動される魔法は一種類。当たり前の事ですわ。でも、それが何種類も、しかも強力なものだとするのなら? すぐに発動できるだけでも便利だというのに、それが強力なものであればどれだけ心強いか」 確かにエルの言う通りだ。 緊急時にだらだらと長ったらしい詠唱をするなんて馬鹿のやる事だ。 特に戦術に重点を置いているユーレリウル学園の生徒なら、そんな事を問うまでも無いだろう。
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