少女たちの楽園へ……

51/58
前へ
/617ページ
次へ
そんな事をする奴がいたら見てみたいものだ。 「勿論、自分の魔力に見合ったものでなければ発動しないのは当然ですが、強力な魔法をすぐに使えるという利点に変わりはありませんわ」 「でも、そんなに便利なら誰も知らないというのもおかしなことでしょう?」 アシュレイから言葉が入る。 便利なら誰も知らない訳が無いだろう。ましてや利便性を求める時代だ。 そんな便利なものが広がっていないなんて、むしろおかしい事だと言える。 「確かに。それもそうですわね。時代が変わりましたの。昔は魔法陣が多く使用されていたのですが、便利なガスコンロや電化製品などが多く出回るようになり、いちいち作るのに時間がかかる魔法陣は廃れてしまったのです。 私が先程、多種類の魔法を幾つも使えたのは、実はこの魔導書のおかげなんですのよ。この魔導書には幾つもの魔法陣が書かれています。小さいものから大きなものまで、様々な状況に応じた使用が出来るようにと。 昔……丁度五百年くらい前かしら。その頃は貴族ならば一冊は、この魔導書を所持していたのですが……今はもう誰も使用していませんわね。書庫を探してみれば見つかるかもしれませんが……」 期待しない方がいいでしょうと、溜息混じりにエルは言う。 嘆かわしいと言わんばかりの溜息だ。 文化は時の流れと共に消え去って行くがさだめ……とはいっても、忘れてはいけないものまで忘れてしまうのでは、たまったものでは無い。 この魔法陣の知識は、本来魔法を使う上で最も必要な知識になる。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加