少女たちの楽園へ……

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暗殺? それとどう関係しているのだろうか。 「戦場では派手な魔法が飛び交います。被弾すれば即死です。だからこそ、注意は正面を向いています。攻撃が飛んできている方を注目しますわよね。 では、そんな攻撃をかいくぐって相手に気付かれる事無く近づき、自身の存在を悟られる事無く敵を一人一人葬って行く。それが出来れば容易いでしょう? その為には魔法を使用してはいけない。相手の体内に遅効性の毒を送り込むのですから。即効性の毒がいいのなら、奇襲をすれば良いだけ。ですが、奇襲はそう易々と成功する訳ではありません。 その中でも最も成功しやすかったのがこの暗殺部隊です。主に一人から五人程度で動く事が多く、伏兵と同時に相手に送り込む事が多かったのです。 送り込まれた暗殺者は、不可視以外の魔法の使用をせず、全て近接戦闘で対象を葬り去っていきました。当然、狙うのは指揮官クラス。敵の大将を打ち取る事は非常に難しいのです。ですから、まずは前線の指揮官を倒し、指揮系統を混乱させ、流れを引き寄せる必要性があるのです。 当然、指揮系統が混乱すれば前線の兵士たちはどのように行動すればいいのか分からなくなるでしょう。兵の統率は戦況に大きく関わりますからね。だからこそ、指揮官は前線に出らずとも実力が必要とされることになりましたわ。特に魔術での戦闘では無く近接戦闘力求められました。 そこから徐々に主な戦闘の形態が変わり始めました。魔法主体の戦術から、近接戦へ。自身に対する物理的攻撃を防ぐためには、当然盾が必要です。ですが、その相手を倒す為には魔導書を使用した魔法で無くとも構いません。現在の魔法陣を使用しない魔法でも構わないのですから。大きな魔法を使いたければ、詠唱をすれば構わない。 だからこそ、戦闘のスタイルは大きく変わり、徐々に戦争の中に剣と盾を持つ者が現れ始め、現代の戦闘形態になりました。 当然、その過程の中で、作るのが面倒な魔導書などという、非効率的な武器は失われました。これが魔導書が現在に至るまでに寂れて行った理由です。戦闘に関係のない魔導書は幾つか残っている様ですが、それらは一子相伝の代物。途絶える事は無いでしょうが、日の目を見る事は無いでしょうね」
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