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そんな妄想は一瞬で打ち砕けてしまえばいい。
「だから、無理なんだよ」
「黙って彼氏くらい作っている奴くらい、いるんじゃないのか?」
「さぁ? 私は知らないけどいるんじゃないの? 実際、噂が流れたこともあったし」
「別に放っておいても構わないだろうに。今時、良家のお嬢様だからと言って、自由を束縛される時代でも無くなったし」
「残念な事に、そんな風習が根強く残っているんだなぁ。だから、もしかしたら……」
そこでシルノは、言葉をとぎる。
そうして、見る見る内にその可愛らしい顔が、耳まで真っ赤に染まっていく。
「私とお兄ちゃんの結婚、なんて事もあり得るかも」
ぼそりと小さく呟いた一言。
ファイには聞こえたが、聞こえないふりをする。
生憎と近親相姦とか、幼女とか、妹とかには興味が無い。
そう言った趣味の連中が聞いたら発狂しそうだ。泣いて喜んで、飛びおりるかもしれない。夢か現か確かめる為に。
「……なんて言ったんだ?」
「ううん。何でも無い」
言葉を無かった事にする。初恋、と言うほどでも無い。淡い憧れ。
ただ、強く優しいから。
本当なら憎まれ、殺されても仕方ない相手だというのに。
シルノが生まれる前に死んだ、叔母……ミルネの妹のように。
四肢を斬り落とされ、最後に首をはねられた彼女のように。
尤も、親の姉弟喧嘩に口を出さないのは、当然の事であるが。
尚、二人が今現在向かっているのは、エルの所。
積もる話もあるし、今後の方針についても話しておきたいので。
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