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腕に絡みついている従妹の事はもう放って置く事にして、早くエルの所まで歩いて行く。
もう周囲の視線なんて知った事か。
堂々と、歩いて行くしか無い。完全に開き直る。
が、当然中には口やかましい生徒もいるようだ。
「お待ちなさい!」急に呼び止められる。
背後からだったのと、まさか自分が呼び止められているとは思いもしないファイは、その声を無視して歩き続ける。
一々、そんな事に興味を示してやるほど、暇では無い。
やる事は沢山ある。
「お待ちなさいと言っているのが聞こえないの! そこの腕を組んでいる男女!」
腕を組んでいる男女と言われて、初めて立ち止まるファイ。
「え? 俺の事?」
きょとんとした表情で振り返り、自分の事を指さす。
「そうですわ! 貴方です!」
「えっと……君は?」
肩で息をしている少女に向かってそう尋ねる。
見たところ、シルノと同じ年齢だろうか。
尤も、女子生徒の年齢なんて途中から分からなくなるのだが。
その女子生徒は、眼鏡をかけていかにも委員長風の生徒だった。
「私の名前は――」
「一体何の用なのよ、アイラ」
少女が答える前に、シルノがそう言う。
ああ、やはり同じ年齢であっていたらしい。
「シルノ・ミルネ・カレイネル……! 貴女は一体何を考えておりますの! 神聖な学園内で男女がイチャイチャするなど……!」
神経質にそう言うと、シルノの隣に居たファイもにらみつける。
「貴方一体何者ですの! こんな公衆の面前で……恥ずかしくは無いのですか! 卑しい従者風情が……!」
酷い言いようだ。
ただ単に腕を組まされていただけで卑しいだなんて。
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