聖女と淑女と少女達とそして従者

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とばっちりがよく飛んでくる日だ。本当に。 色々と死にかけているし、来たくも無い学校に通わされるわ……。 踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂だ。 「言いたい事はそれだけかい? なら、俺はもう行くぞ」 ファイがそう言おうとする前に、シルノはアイラに食ってかかる。 どうも挑発には弱いらしい。特にファイに関する事だけは。 「ちょっと待ちなさい。今の言葉は撤回しなさい」 気にしないでおけばいい物を、シルノは過剰に反応する。 「撤回? する必要性があるんですの? 学校内でふしだらな行為をしていたというのに」 腕を組んでいただけでふしだらな行為になるのだろうか。 激しい疑問を覚えながら、ファイは静観する。 一々相手をしてやるのも気が滅入る。これからエルとの話し合いが待っているというのに。 「お兄ちゃんを侮辱するなんて許さないわ」 「まぁ、貴方は彼女にお兄ちゃんなんて呼ばせているの! この変態!」 「お兄ちゃんを変態って呼ぶな! 私とお兄ちゃんはこれでも従妹なんだから!」 「でも、戸籍上のつながりは無いと」 言いたくなってしまったので言ってしまった。 実際に戸籍上では何ら繋がりが無い二人である。 「つながりが無いのに従妹とは……」 呆れ返ってものも言えない風のアイラ。 これには色々と深い事情というものがあるのだ。色々と。 「まぁ、貴族故の問題だよ。君にもわかるだろう。だからもう行くね」 そろそろ話を打ち切りたいファイは、さっさと歩を進めようとする。 だが、例によってその場から結局は動けない。 主に腕に絡まっているシルノの所為だ。 「お待ちなさい! 従者が貴族を誑かすなど、言語道断! 今ここでその性根を叩きなおして差し上げますわ!」 細剣を取り出してそう叫ぶアイラ。 格式ある貴族ってのは、どうしてこうも細剣を選択するのかどうしても理解出来ない。 どうせ、見た目とかの問題だろう。 戦闘能力で言えば、刀には遠く及ばないのに。 刺突以外の使用が出来ない上に、折れ易い。使用者の腕次第だが、ド素人が使ったら武器の性能ってのは分かり易いものなのだ。
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