聖女と淑女と少女達とそして従者

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装飾がされたそれの切っ先を、ファイへ向ける。 その構えからは一切の躊躇いは感じられない。 成程、それなりには訓練しているらしい。構えだけは。 「あー……本当にやる気?」 「今更怖じ気づきましたの? 下賤な犬風情にはお似合いです事。でも逃がしはしませんわ」 「これまた面倒なのに捕まったなぁ……」 愚痴るファイ。常識的に考えて、ファイの方が圧倒的に強い。 それこそ、赤子の手を捻るかのように、簡単にアイラを倒せるだろう。 大人げないくらいに簡単に。 どうせ、適当にあしらっても、ひたすらに突っ込んでくるだけだろう。 ファイが逡巡していると、すぐさま攻撃をしてくる。 魔法での攻撃。火属性。傍らにはシルノ。 避け辛い。よけたとしても此処には他の生徒達が多数いる。 見せたくはない、が出し惜しみも好かない。 目の前に迫る魔法に対処するべく精神を一瞬だけ集中させた。 次の瞬間に、莫大な熱エネルギーをもっていたそれは、消えてなくなった。 消えた。その事実に唖然とする少女。 「逃げるぞ!」 同様に呆然としていたシルノを抱えて、ファイは走り出す。 「ふぇ……? わっ!」 「お待ちなさい!」 背後から追いかけて来る気配はあったが、魔法を使用する気配は無かった。 むやみやたらに魔法を撃つようなら、周囲への被害も考えて迎え撃つ方針に変えようかとも考えたが必要はないようだ。 まぁ、逃げ脚には若干の自信がある。最初のころは、リオンの訓練から逃げる為に、よく逃げ回ったものだ。 学校では追い回す事の方が多かったけれど。 「待てって言われて待つ奴ぁいないよ!」 廊下をある程度走って、角を曲がった直後にある窓を開けて飛び降りる。 周囲に居た生徒と、腕に抱えている従妹が悲鳴を上げたが、なに、気にする事じゃ無い。 風属性の魔法を使えば造作も無い事だ。 ふわりと風を巻き上げて、ゆっくりと着地する。 因みに、ユーレリウル学園ではよくある事だ。
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