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相変わらず黙ってチケットを眺めたままのクルド。
何かを考えている事に違いない。
そこに一瞬だけ、肌に走るような殺気を放つ。
気付くか気付かないかの、そんな微細な殺気だ。
小さな小粒といえどもピリリと辛い山椒の辛さの様。
それは肌にまとわりつく。
周囲に居た中で、それに気がついたのは、ファイだけだ。
卓越した戦闘センスを持つカレナでさえも、リオンの放つ殺気には気がつかなかった。
尤も、ファイが気がついた理由は普段から似た殺気を、肌で感じているからにすぎないのだが。
どうやらクルドもそれを感じ取ったらしく、また一瞬だけ眉をひそめる。
「……いいわ」
と、短く肯定の意を示した。
彼女のその答えに、教室内がどよめく。
何せ落ちこぼれである所のリオンの誘いに、転校生が乗ったのだ。
しかも、彼の事を知っていてそれでもなおだ。
驚きと困惑、そして微細な落胆の色が、教室内に広がった。
何せ、リオンは顔だけはいいのだから、一部の女子からは地味な人気を持っていたりする。
それでも、落ちこぼれというものが、非常に大きくてとてもではないが、彼氏になどしようと考える人はいなかったが。
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