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エルはそう言って杖を一振りする。
そうすると、二人の身体が浮き上がる。
そのまま空中を漂い、空へと舞い上がる。
誰もの視線が集まる中、屋上へと昇って行く。
エルは悠々と箒に腰掛け上昇しているのに対して、ファイとシルノは随分と乱雑に引っ張られている。
随分と荒っぽい性格のお嬢様だ。見た目は優雅だってのに。
「……それで、お前が何の用だ」
屋上まで到着して、周囲に目と耳が無いのを確認して、エルは口を開いた。
相変わらず箒に腰かけたままだが、足を組んでおり、先程までとは声の調子も話し方も全く違う。
先程までが清楚、と言うのであれば、今の状態は妖艶、とでも言うのだろうか。
「私だって、この学校の生徒よ。この学校の事を気にして悪いかしら?」
フンと鼻をならし、顔を逸らしてシルノはエルにそう言った。
「愛校心溢れる事は結構なことだ。そいつで自分を殺しちまわない様にするんだな」
「似たような事は聞いた。でも前の時も私は死ななかった」
「そいつは運が良かっただけだ。もし、俺達がいなかったら、お前は確実に死んでいたからな」
「今度も同じよ」
「どうかな? 分からないぞ。世間じゃなんて言われているか知らんが、俺も人間だ。出来る事には限りがある」
「……あんたが神様なんて信じられないわよ」
「そいつはいい事だ。俺は人間離れしているがまだ人間の枠組みだ」
「ふん、だったら余計あんたに指図をさせる理由は無いわ」
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