聖女と淑女と少女達とそして従者

8/47
前へ
/617ページ
次へ
エルはそう言って杖を一振りする。 そうすると、二人の身体が浮き上がる。 そのまま空中を漂い、空へと舞い上がる。 誰もの視線が集まる中、屋上へと昇って行く。 エルは悠々と箒に腰掛け上昇しているのに対して、ファイとシルノは随分と乱雑に引っ張られている。 随分と荒っぽい性格のお嬢様だ。見た目は優雅だってのに。 「……それで、お前が何の用だ」 屋上まで到着して、周囲に目と耳が無いのを確認して、エルは口を開いた。 相変わらず箒に腰かけたままだが、足を組んでおり、先程までとは声の調子も話し方も全く違う。 先程までが清楚、と言うのであれば、今の状態は妖艶、とでも言うのだろうか。 「私だって、この学校の生徒よ。この学校の事を気にして悪いかしら?」 フンと鼻をならし、顔を逸らしてシルノはエルにそう言った。 「愛校心溢れる事は結構なことだ。そいつで自分を殺しちまわない様にするんだな」 「似たような事は聞いた。でも前の時も私は死ななかった」 「そいつは運が良かっただけだ。もし、俺達がいなかったら、お前は確実に死んでいたからな」 「今度も同じよ」 「どうかな? 分からないぞ。世間じゃなんて言われているか知らんが、俺も人間だ。出来る事には限りがある」 「……あんたが神様なんて信じられないわよ」 「そいつはいい事だ。俺は人間離れしているがまだ人間の枠組みだ」 「ふん、だったら余計あんたに指図をさせる理由は無いわ」
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加