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放たれたファイの一撃はエルの腹部に突き刺さり、その場に膝をついてしまう。
中々に重い一撃だったようだ。これが薬になってくれればいいのだが。
「おま、ちょ、普通女の腹を殴るか……!」
腹部を抑えて悶えるエル。
「普通の女性にはしませんよ。それと、何度も言うように、貴方は男です」
「いや、今女なんだけど」
「まさか生殖器官まで完璧に模写しているとでも?」
「当たり前だ……!」
「なんて、俺が驚くと思っていますか? 一回父さんにバラバラにされて、それでもピンピンしていたような人が何を言うんですか」
「それでも痛いもんは痛いんだよ!」
「そうですか。ショック死してください」
「ひでぇ……日増しにサドになっている気がする。昔はこんな子じゃ無かったのに……」
懐かしむような瞳でエルは遠くを眺める。
彼女の視線の先には、蒼い空が広がるだけ。
他には何もない。いや、だからどうしたんだと聞きたいのだが。
「ええはい。誰のせいでしょうかね一体誰の。もう良いですから、さっさと始めますよ。ホームルームまでに作り終えないといけないんでしょ」
本当にエルとの会話をしていると、本題から話がそれて行く。
「やれやれ。お前は先に始めてろ。俺はここに不可視と防風の結界を張るから」
溜息を吐きながら、ファイにそう指示を出すエル。
溜息を吐きたいのはこっちだ、と言いたかったが、流石に彼も成長し学習する。
当然、流しておいた。
「ところで、いつまで私はこのままなの?」
今まで呆然と二人のやり取りを見ていたシルノは、思わず呟いた。
さっきから亀甲縛りをされたまま動けないのだ。
いい加減解除して、言おうとしたのだが、ファイとエルの言い争いの中、入る事が出来なかったのだ。
使用した本人すら忘れていては、話にならない。
と言うか、絶対わざとだ。
気付いていないふりをしているだけだ。
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