聖女と淑女と少女達とそして従者

14/47
前へ
/617ページ
次へ
放っておいても、色々と面倒なので、とりあえずはそのまま身動きが取れない様にしておこうと、ファイも考えたのだ。 縛り方はやはりあれだが。 「紙は一体どうするんですか?」 「ああ、紙ね。紙なら職員室からくすねて来たのが一つ」 どさっとコピー用紙をその場に置く。 「先に作ってろ。一枚一つの魔法陣だからな。間違えて二つも書くなよ。後が面倒だ」 それを聞くとファイは渡された魔法陣に魔力を流し込む。 すると、コピー用紙に魔法陣が一つだけ描かれた。 おおーと目を輝かせてそれをまじまじと見る。 複雑な魔法陣がこれほど簡単に、作ることが出来るのか。 やはり魔法陣と言うのは素晴らしい。 「感心してないで、次の作れよ」 どうやらエルは新しい魔法陣を描いているらしい。すらすらと、迷うことなく中に文字を描いて行く。 魔法で魔法陣を書くなんて荒技をよくやってのけるものだ。 言われたとおり、次に次に魔法陣を作って行くのだが……。 これがえらく単調で退屈な仕事だ。 一つの魔法陣を作ったら、また次の紙に魔法陣を描いて行く。 現代っ子からすれば、随分と時間のかかる作業に思える。 まぁ、これが一昔前なら、全部手書きだったんだから、時間の短縮は出来ているというべきだろう。 三十分ほどすると飽きてきて、ふとエルの方を見ると、ありえない光景が広がっていた。 なんと複数の魔法陣を使用しながら、同時に複数の魔法陣を作っているのだ。 ファイの作業は、白紙を用意する、渡された魔法陣に魔力を込める、紙に魔法陣が描かれる、それを別の山へ移動させる、の繰り返しだ。 それと比較した際にエルの作業は、魔法陣に魔力を込めていたら、勝手に白紙に魔法陣が描かれて、勝手にその紙が別の山へと移動して、また魔法陣を描く、この繰り返しだ。 しかもこれを複数同時に行っていながら、更に新しい魔法陣を描いている。 複数の魔法を同時に使用する事は、基本的にかなり難しい。 エルですら手の数だけしか、魔法を同時に使いはしない。 だが、魔法陣なら、複数の魔法を同時に行う事が出来る。 なんと効率の良い事だろうか。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加