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放っておいても、色々と面倒なので、とりあえずはそのまま身動きが取れない様にしておこうと、ファイも考えたのだ。
縛り方はやはりあれだが。
「紙は一体どうするんですか?」
「ああ、紙ね。紙なら職員室からくすねて来たのが一つ」
どさっとコピー用紙をその場に置く。
「先に作ってろ。一枚一つの魔法陣だからな。間違えて二つも書くなよ。後が面倒だ」
それを聞くとファイは渡された魔法陣に魔力を流し込む。
すると、コピー用紙に魔法陣が一つだけ描かれた。
おおーと目を輝かせてそれをまじまじと見る。
複雑な魔法陣がこれほど簡単に、作ることが出来るのか。
やはり魔法陣と言うのは素晴らしい。
「感心してないで、次の作れよ」
どうやらエルは新しい魔法陣を描いているらしい。すらすらと、迷うことなく中に文字を描いて行く。
魔法で魔法陣を書くなんて荒技をよくやってのけるものだ。
言われたとおり、次に次に魔法陣を作って行くのだが……。
これがえらく単調で退屈な仕事だ。
一つの魔法陣を作ったら、また次の紙に魔法陣を描いて行く。
現代っ子からすれば、随分と時間のかかる作業に思える。
まぁ、これが一昔前なら、全部手書きだったんだから、時間の短縮は出来ているというべきだろう。
三十分ほどすると飽きてきて、ふとエルの方を見ると、ありえない光景が広がっていた。
なんと複数の魔法陣を使用しながら、同時に複数の魔法陣を作っているのだ。
ファイの作業は、白紙を用意する、渡された魔法陣に魔力を込める、紙に魔法陣が描かれる、それを別の山へ移動させる、の繰り返しだ。
それと比較した際にエルの作業は、魔法陣に魔力を込めていたら、勝手に白紙に魔法陣が描かれて、勝手にその紙が別の山へと移動して、また魔法陣を描く、この繰り返しだ。
しかもこれを複数同時に行っていながら、更に新しい魔法陣を描いている。
複数の魔法を同時に使用する事は、基本的にかなり難しい。
エルですら手の数だけしか、魔法を同時に使いはしない。
だが、魔法陣なら、複数の魔法を同時に行う事が出来る。
なんと効率の良い事だろうか。
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