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ファイは溜息を吐いて、エルを咎める。
自分達が餌になれば、簡単に相手の尻尾をつかめる筈だと考えるのは、妥当である。
「ファイ、貴方の考えは妥当ですが、この間の様に組織的な犯行だとするのなら、そう簡単には尻尾をつかませる事は無いでしょうね」
此処に有名な蜥蜴の尻尾切りという、言葉がある。
トカゲは自身が危険になると、尻尾を切り捨て相手の注意を引く。
そして、トカゲ本体は逃げるのだ。
トカゲの尻尾はまるで生きているかのように動く。
だからこそ、相手の注意をひき、自分自身が逃げ伸びるには相応しいのだ。
尚、尻尾は放っておけばまた生えてくる。
「もし、彼等が幾つも、尻尾を用意していたら、そう易々とは捕まえる事は出来ないでしょうね。切られておしまいです」
「トカゲの尻尾は一本しかありませんよ」
「尻尾が無いトカゲのしっぽを掴めればいいのだけれど」
「それが最良の結果なんですがね。出来ないんですか?」
ファイは、ふとエルに尋ねた。
主人役の彼女は、顔を不愉快そうに歪めて言う。
「難しいでしょうね。大きな餌も所詮は撒き餌だった様ですしね」
前回、学校を襲撃してきたあの男を生け捕りにしなかったのが、本当に悔やまれる。
あいつさえ、捕縛していれば、今回のように面倒な思いをせずに済んだのだろう。
「で、どうするんです?」
「どうせ攻めあぐねるか、どうかする筈だ。機を待て。大きく動くのを」
「待てって言われましても、学校の方はどうすんです?」
「どうにかしてくれるさ。あの姉がな」
投げやりな返答。言葉遣いも元に戻っているし、本当にかったるそうだ。
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