聖女と淑女と少女達とそして従者

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学校ではどことなく違和感を感じていたのだ。 「あらあら、折角助けに来て差し上げたのに、お礼の一言も無いんですの?」 気丈な女子生徒に、エルはそう言ってやる。手は差し伸べない。 自分で立とうとしない限りは。 「五月蝿い! あんたみたいなへんちくりんな奴がいなくてもね、私は一人でどうにか出来たの!」 目の端に涙を浮かべて言われても一切説得力がないですよ、とファイは言いたかったがとりあえず我慢しておく。 何時もの癖で突っ込んでいては、埒が明かない。特にこの手の人間には。 際限なく自分の意見を推し進めるだろう。 だからこそ、大人しくしているのが吉だ。 エルはどうか知らないが。 「確かに、そうですわね。だって、貴方には魔法陣をお渡ししていた筈ですから」 微笑みを浮かべたまま、彼女は言う。 「魔法陣? ああ、この得体のしれない文字が書かれた紙の事かしら?」 一枚の折りたたまれた紙を、彼女は取り出した。 それが魔法陣だ。 「そう、それさえあれば、あのくらいはどうにか出来た筈なのですが」 「こんな気味の悪い物が使える訳無いでしょ!」 「まぁ、確かにそうですわね。所で、貴方の従者は何処へ行かれたのですか?」 珍しくあっさり食い下がると、彼女は少女に尋ねた。 この性格からして、従者がいない事は無いだろう。
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