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こうなった以上、二人は置き去り。口を挟む事などできやしない。
「え? あ、いや、あれは……」
「あれほど言いましたよね。目立つような行為は止めて下さいと。俺達が目立ってはいけないんですよ目立っては! どうせ我儘な貴方の事ですから、喧嘩でも売ったんでしょう!」
どうやらファイにはお見通しらしい。
「いや、あれは……長女が」
「長女が、なんて言い訳は結構! 行動で示して下さい! 全く……ただでさえ、大事な時間を押してきているというのに、こんな事で浪費している時間も勿体無いんですよ!? 分かりますか!」
「それは私だって……」
「私も同じとか言わないでください。貴方はともかくとして、こっちは来るべき大舞台へ向けて、訓練に励もうかとも思った矢先だったんですから! いいですか、個人戦は無いんですよ。団体戦だけなんです。予選リーグこそ、団体メンバーの中から、個人で行う事とは言っても、決勝トーナメントからは全て五人一組の団体戦になるんです。チームワークだとか、有力チームの偵察だとか、対上級生用の戦略だとか、いろいろとやることがあるんですからね!」
「そんな事は帰ってからでも遅くは無いでしょう」
「いいえ、遅いです。兵は神速を尊びます。どれだけ時間を使っても余るという事はありません。いつも足りないくらいです!」
「ああ、はいはい。分かりました。まったく、我儘なんですから」
「我儘は一体どっちですか。全く、腕の一本でも切り落としましょうか」
「いや、野蛮ですわよ」
「誰が野蛮にしていると思っているのですか。腕だけで無くて、足も切り落としましょうか。貴方はいっつも幽霊見たくふわふわ浮いているから大丈夫でしょう」
「貴方は女を達磨にでもして遊ぶ趣味があるのかしら?」
「貴方にだけは言われたくない台詞ですねぇ。SM大好きのレズの癖に」
「その設定、一体いつ作ったの!」
「え? 違うんですか?」
惚けた風にファイはそう言ってやる。
バチバチと互いの視線をぶつけ合い、火花を散らす。
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