聖女と淑女と少女達とそして従者

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まさに一触即発。 彼らはすでに、リンとなっているに違いない。大気中であっさり火が付いてしまう、Pに。 やがて、互いの視線によって散らしていた火花によって、火がついたらしい。 互いに無言で、拳を交えた。 「ふふふ……貴方も考える事は同じでしたか」 「ええ、勿論。主人だからと言って甘やかさないのが、俺の主義なんで」 「うふふふ、主人に逆らえばどうなるか、調教しなければならないようですね」 「ええ、その言葉、そのままお返しします」 ドン! 音を立てた風に、二人を覆う空気が変わる。 互いに得物を構えて、じりじりと距離をはかる。 特に実力で大きく劣るファイはそれが顕著だ。 だが、時には豪胆さを持っている。 素早く懐に潜り込むと、抜刀。 自らを相手の居合に入る、居合斬り。その戦術には何よりも、速度が要求される。 無駄な動きは素人目からは見られない。 だが、確実に捕らえた筈のエルの体はその刀をするりと抜けていた。 柔らかな風の軌道。 体の一部分だけ、すり抜ける。 エルは魔導書を開いて、反撃態勢を整える。 箒に腰かけたままだ。 そのまま魔法を展開。 一つの魔法陣により、複数の魔法陣を召喚。そして、そこから魔法を次々と放つ。 その一つ一つを紙一重の距離で回避して、炎刃を放つ。 だが、当然その変わり映えのしない攻撃は打ち消される。 杖の一振りで、造作もなく。 飛び上がり、迫りくる弾幕をすべて空中での姿勢制御で、回避するとエルに詰め寄る。 その太刀は回避されたが、場所を移動したが為に、魔法陣は消える。 回避したエルめがけて、空気を蹴って、距離を詰めての追撃。 一本の刀では、詰める事は出来ない。 だからこそ、今度は鞘での攻撃も加える。 鞘の殴打と、刃によるリズミカルな攻撃に、回避運動を余儀なくされる。 だが、当然のことながら、エルは「古風な魔女」でありながら、近接戦闘も出来る変わり者。 杖に氷の剣を作り出して、ファイの攻撃に対抗する。 氷の剣を地属性で強化すれば、鉄に負けない程の強度が得られる。
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