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ファイが壁を打ち抜いたのだ。
壁にぶつかってから破壊までの時間はわずか二秒。
それだけの時間だ。
だが、それだけの時間があれば、移動には苦労しない。
中空へと移動していたエルは、ファイが壁を貫いた事を驚きながらも、次の行動を行っていた。
魔法陣を再び展開、次は特大の捕縛魔法だ。
ぎろりとリオンの姿を見つけると、ファイは刀を鞘に納め、飛び上がった。
行動が早い。
エルは内心舌打ちをすると、すぐにそれまでの魔法陣を消して新たな魔法陣を作り上げた。
そうしてそれを発動させる。
先程と同じように魔法と魔法の間を、縫うようにリオンへと肉薄する。
そうして、抜刀。
蓄積され、圧縮された膨大な魔力が一気に解放され、巨大な刃となってエルに襲いかかる。
それを避けようという素振りを一切見せず、その場で新たな魔法陣を展開する。
二人の技がぶつかりそうになった、その瞬間。
「何やってんだこの馬鹿共ッ!」
その咆哮と一緒に、激しい暴風が二人を襲った。
互いの魔法は打ち消され、強い風に体勢を崩して地面へ落ちて行く。
エルはふわりと優雅に爪先から着地したが、ファイはそう言う訳にも行かず、背中を強かに地面に打ち付ける。
「あらあら、貴方が自ら出向いて来るとはね」
溜息を吐いて先程の声の人物を見るエル。
だが、溜息を吐きたいのはこっちだと、その人物は言う。
「全く、心配して様子を見に来てみれば、この有様だとはね」
うんざりした風に、そう言う。
「で、何の用ですか? 暴風の魔人がこのような所に」
口を尖らせてつまらなさそうに、エルは目の前で腕を組んでいるクロノに向かってそう言った。
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