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周囲には何時の間にやら人ごみが出来ていた。
殆どが見物客のような野次馬ばかりで、魔法を使って派手に戦闘をする二人を見に来たのだろう。
そこまで長い事戦闘はしていなかったというのに。
数度の切り返しがあったくらいで、時間に換算すると僅か二十分も経っていないのでは無いだろうか?
まぁ、あれだけの戦闘を行っていたら、人が集まってこない訳も無い。
周囲の建物も、若干どころかかなり傷が付いている。
因みにクロノは偶然、近くを通りかかった際に、戦闘音が聞こえたので、気になったから来ただけだ。
当然、本来の目的は自分の息子が心配だったから、その様子を見る為に、二人を捜していたのだが。
まぁ、来てみれば馬鹿二人が「喧嘩」をしていたから、咄嗟に止めたのだが。
「どのような御用とはご挨拶だね。さっきも言った筈だよ」
溜息を吐くようにクロノは言った。
「冗談。私たちなら心配など不要ですわ。私がついているのですから」
「エル、貴方がついているから、余計に心配なんだよ」
周囲の惨状を見て、クロノはまた溜息を吐いた。
幾らかまた老けた風に見える。
見物客たちは、目の前に立っているのがあの「暴風の魔人」であるという事に気がついて、ざわめき立つ。
「まぁ、案の定これだからな。やっぱり見にきて正解だった」
誰に言うでもなく、クロノは愚痴をこぼした。
「あらあら、失礼ですわね。これでもきちんと加減はしていましたわ」
「これで、何処がだよ」
「私が本気を出せばこの辺りは更地になりますわよ?」
「やれやれ、冗談じゃ無い所が、余計に怖いんだが。というか、貴方はもう少し周囲に気を配る事は出来ないのですか」
「だから十分……」
「気を配ったなら、此処まで地面が抉られたりしないでしょうに」
灰色のコンクリで舗装された道は抉られて、黄土色を露出していた。
「そんな事を気にしていては魔法なんて使えませんわ」
「よく言うよ……ったく。きちんと直しておくように」
「なぜ、私が」
「反論は受け付けません。頭を磨り潰されたくなければ、すぐにとりかかりなさい」
クロノがそう凄むと、渋々エルは魔法で道を修復する。
非常に面倒臭そうだ。
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