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随分とのんびりとした対応だ。
どうせ、先程の戦闘を見た見物客の一人が、警察に電話をしたんだろう。
「ああ、警察か。何でも……」
「遅いわよっ!」
慌ててやってきた巡査に向かって、今まで蚊帳の外だったさっきの生徒が叫ぶ。
(そう言えば、まだ名前を聞いていなかったな)
ふと、ファイはそんな事を思う。
良家のお嬢様である事は当然だが、顔も見たことが無い。
「このアリギエーリ家の令嬢を危険な目に遭わせるなんてどういうつもりよ!」
それを聞いた警官は驚き、背筋を伸ばして深く頭を落として謝罪する。
その行動も仕方ない事と言えば仕方ないか。
流石のファイも驚いた。まさか、あのアリギエーリの令嬢がいたとは。
アリギエーリ家は、代々政府に深く関わってきた名門貴族だ。
もし、カレナの家であるユエルア家が治安や軍勢に関しての名門であるとするのなら、その逆であると言っても間違いでは無い。
軍人と政治家。
全く違うが、各部署に与える力はどちらかと言えば、政治家の方が大きいだろう。
軍部はあくまでも、国王の命に従うだけ。
各関係の予算配分にまで口を出して、更には人事まで手を加えることがある。
全く公務員の首根っこを掴んでいると言っても、差支えが無い名家の一つだ。
カレイネルは王の側近である為、地位で言えばアリギエーリの方が低い。
が、実質的には力を持っているのは、多大に干渉しているアリギエーリである。
と言うか、そんな奴に喧嘩を売って平然としていられるのはエル位だろう。
普通のは人なら冷や汗くらいは流すはず。
「あら、貴女はあのアリギエーリ家のご令嬢でしたの」
皮肉を織り交ぜた口調でそう言うエル。
ここにきて未だ神経を逆撫でするか。
「それにしては随分と落ち着きがないですこと。アリギエーリ家と言えば代々冷静で、正確な判断を下す事で有名ですが」
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